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第十一章
アウランガーバード(エローラ・アジャンタ) 「ジュリアとの出会い、楽しすぎた3日間」 |
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□ インド人お宅訪問 大歓迎に唖然 デカン高原の田舎町、アウランガバードでの日々は過ぎていった。 ジュリアのことを吹っ切るために予約したデリー行きのエアチケット。 とうとう、と言うより、やっとその出発日がきていた。 離陸時間は午後5時過ぎ。 ホテルのチェックアウトから暫くの余裕がある。 名残惜しいような甘酸っぱいような、思い出の詰まったホテルを後にした。 飛行機の時間までどこかでのんびりしていようかとも思ったが、ホテルのレストランで朝食をとっていると、偶然にもリクシャのおっちゃんに出くわした。 「おはよう。 おっちゃん、飛行機の時間までまだあるよ」 俺は荷物をホテルに預けて、おっちゃんのリクシャに乗り込んだ。 おっちゃんお勧めのダルク寺院は、世辞にも”素晴らしい”と言えるようなものではなかったが、貧しい集落に囲まれた真ん中にあり、その村落を歩く間に、そこに住む人々の生活を見ることができた。 共同井戸で水をくみ、庭で洗濯をし、子供達が元気に走り回り…。 時間が、まさにのんびりと流れていた。 観光地なんかより、こんな光景を見る為に一人で旅行に来たんだよな、と思った。 ダルク寺院の隣にある、村落を見渡せる小山に登った。 途中、遊びに来ているのであろう、地元の若い女の子達にピーナツを貰って食べた。 嬉いことに名前を聞かれた(インドで異姓に名前を聞くことは”あなたを気に入りました”という合図)。 おっちゃんが 「俺の家に来ないか?チャイをご馳走するよ」 と言ってくれた。 子供が大勢いることは聞いてたので、ちょっとしたおみやげを用意し、おっちゃんのリクシャで自宅に向かった。 今にも崩れそうな、小さな家々が集まった集合住宅地区のような所だ。 随分と貧しそうな地区にも見えたが、おっちゃん曰く、インドではまだマシなほう、なのだそうだ。 家、というか土壁の小さな建物といったおっちゃんの自宅。 入ってみて思わず目を疑った。 子供が8人と奥さんが2人! さらに母親に、妹とその子供も一緒に暮らしている。 家は4畳ほどの小さな部屋が2つだけ。 しかも一つはキッチンだというのだから、一体全体ここでどうやって生活しているのだ?! そこに俺がノコノコと案内されて入ったために、一家はもう大パニック! 「日本人が来たぁ!」 といった具合に、上へ下への大騒ぎになってしまった。 子守役の子供はまだ赤ん坊の子供を抱えて走り回る。 「まあ、そんなに気を遣わなくても…」 あまりの慌てようにこっちが恐縮してしまう。 狭い家の中で唯一あるベッドを、パンパンと埃をはたく。 あなたははここに座りなさい、と言われるままにに腰を下ろした。 ベッドに腰掛けた俺を囲むように、おっちゃんは子供達全員を床に座らせた。 子供達はおっちゃんの言うことにとても素直だ。 全員の視線が一斉に集まる。 一人だけ高いベッドに座っているので、どうにも落ち着かずに床に座ろうとしたが、おっちゃんが「お前はここに座っていなさい」と慌てて止めた。 おっちゃんは家族を俺に紹介してくれ、そしてわざわざ子供に買ってこさせたチャイを持ってきてくれた。 さらに、ヒンドゥーの聖日の儀式に参加させてもらった。 少しなごんできたところを見計らい、俺はバッグから折り紙を取り出した。 これはこんな時のためにわざわざ日本から持ってきたものだ。 飛行機に小鳥、カメラなどを折ったが、特にカメラがウケが良かった。 子供達も必死に真似して折ろうとするのだが、なかなか上手くいかないようで、教えてあげたり、代わりに折ってあげたりした。 そのころにはもう、俺は子供達と同じように床に座っていた。 おっちゃんは何度か止めたが俺は気にしなかった。 もっと子供達と遊んでいたかったのだが、飛行機の時間も迫ってきていた。 俺は、もう使わないと思った、虫除けスプレー、蚊取り線香と線香の入れ物、小物入れ、ライターとペンを子供達にあげた。 外に出て驚いたことに、近所中の人々であろうか、家の前に大勢の人たちが集まって来ていた。 家の前で子供達と一緒に写真を撮り、子供達一人一人にお別れを言った。 お母さんに「ありがとう、また来ます」と言うと、笑って手を握り、その手にキスをしてくれた。 名残惜しい気持ちのまま、俺はおっちゃんのリクシャに乗り、ホテルで荷物を引き上げると空港に向かった。 一本の滑走路らしき道にプレハブ小屋だけの空港で、俺はデリーに向かう飛行機に乗り込んだ。 ジュリアの事も、もう良い思いだ、と思えるまでになっていた。 素晴らしい思い出をいっぱいくれたアウランガバード。 またきっとこの地に戻ることがあるだろうと確信し、飛び立つ飛行機の中から、夕闇迫る外の景色を眺めていた。 |