幹事クリタのコーカイ日誌2007

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8月3日 ● 朝青龍処分について考える。

 巡業の休場届を出しながらモンゴルでサッカーに興じていた朝青龍への処分は「2場所出場停止と4カ月間30%の減俸、九州場所千秋楽の11月25日までの謹慎処分」ということになりました。過去にない厳しい処分と言われていますし、実際朝青龍も処分の重さに戸惑っているのではないかと思います。

 恐らく朝青龍は巡業をさぼることがそれほど大変なことだとは思っていなかったのでしょう。本場所と違い巡業なんて所詮ファンサービスのドサ回りであり、大横綱である自分がなんで怪我をおしてまでわざわざ行かなくてはならないのか、と。横綱の本分は本場所で勝つこと、優勝することであり、そのためにベストのコンディションになるように調整することこそ大事。だからモンゴルに帰って心身ともにリフレッシュすることを優先したんだと。

 以上はあくまでも僕の推察ですが、朝青龍がそう考えたとしても不思議はありません。一般にスポーツ選手ならそう考えるでしょうし、実際にファンサービスなど全然考慮しないで自分の成績を残すことだけに神経を集中しているトップ選手はイチローをはじめ各界にいくらでもいるからです。

 しかし、これは明らかに相撲という世界にいる人間としては考え違いをしています。相撲は第一に神事であるとともに興行です。ファンあってのものであり、巡業は特に本場所を見られない地方のファンに相撲の魅力を伝えるための大切な行事であることを、朝青龍は理解していません。特に横綱はただ勝てばいい、というものではなく、相撲界を代表する看板であることが明示されています。だからこそ、歴代の横綱たちは故障をしていても地方巡業にまわり、土俵入りだけでも披露してファンを喜ばせてきたのです。そんな横綱たちの一人であった北の湖理事長が今回のことで朝青龍に激怒するのはよく理解できます。

 ところで、この「2場所出場停止と4カ月間30%の減俸、九州場所千秋楽の11月25日までの謹慎処分」というのが厳しい処分であることはわかります。ただし相手が普通の力士なら。しかし、朝青龍は相撲の歴史にその名が残るような成績を残している大横綱です。だったら、ひとおもいに廃業させてしまうか、それができないのなら秋場所に出場させて「優勝以外なら廃業」という条件でもつけるべきではなかったのかと思います。

 と言うのも、これだけの力士に対して117日間、部屋と病院以外に外出禁止、などという軟禁状態を強いることは決してスッキリとした処分とは思えないからです。これでは「飼い殺し」「座敷牢」という暗い湿ったイメージしか伝わってきません。大横綱に対する処遇ではありません。横綱は「ちからのもののふ」であり、武士なのですから、武士らしく潔く散る道を用意すべきです。

 ではなぜ協会はそうしなかったのか?ここからは筋論ではなく、裏読みになりますが、朝青龍を飼い殺しにする理由は2つ考えられます。ひとつは新横綱白鵬の台頭にあります。クリーンなイメージの白鵬を協会の看板として育てていくために、朝青龍を2場所閉じ込めておいて、その間に一気に「王朝交代」を図ってしまおうというシナリオが協会内部でできているのでしょう。

 もうひとつは「八百長の口封じ」です。廃業になんかしてしまうと、恨みに思った朝青龍が「主役」としてなにを喋りだすかわかりません。だから閉じ込めておいて口を封じながら、八百長問題の解決を図ろうという魂胆でしょう。朝青龍には餌をぶら下げておかないといけないし、黙らせておくにはこの処分しかなかったのだと思います。

 まあなんだかんだ言っても大相撲は興行です。白鵬というベビーフェイスが登場したこの機会だからこそ、「悪の権化」たるヒール朝青龍は必要不可欠。朝青龍を欠く秋と九州はつまらない場所になりそうですが、朝青龍が復帰する初場所は今から楽しみです。その前に朝青龍がぶち切れてモンゴルに帰ってしまなわければ、ですが。