幹事クリタのコーカイ日誌2010

[ 前日翌日最新今月 ]


 
2月27日 ● 浅田真央は「銀に終わった」が正しい。

 バンクーバー冬季五輪の終盤を盛り上げるに相応しい女子フィギュア。過去にないハイレベルの争いでしたが、結果から言えば戦前の予想通りにキムヨナの圧勝。確かに点が高すぎるんじゃないかという疑念はありますが、韓国のロビィ活動うんぬんはあったとしても、そこも含めて五輪の戦いなんだと考えれば仕方ないことです。それに得点差はともかく、順位として1位キム、2位浅田、3位ロシェットは大方の人が納得のいく順当な結果だと思います。

 そもそもこの種の採点競技の曖昧さは昔から変わっていませんから、今さら騒ぐのは無垢すぎます。今回は順位が妥当なんだから、かなりまともな採点だったと考えて良いでしょう。しかも入賞8人のうち5人がモンゴロイドであり、国別で言えば日本3、アメリカ2、韓国1、カナダ1、フィンランド1。東アジアと北米で7人。ヨーロッパがよくこの結果で黙っているものです。次回のソチ五輪までに何らかのルール変更が行われる可能性が大だと思います。

 それより僕が気になったのは、ブログやツイッターでの世間の感想で、ただただ日本人3選手を絶賛する声が目立ったこと。まあ確かによく彼女たちは頑張ったと思いますが、一切の批判的な言辞を許さないような偏った称賛もまたおかしな態度だと思います。彼女たちをまるで神格化していて、中には「銀に終わった」という表現すらおかしいと言う人までツイッターにはいました。そんなネガティブな表現をするなというのです。まるで戦前の天皇に対する不敬罪みたいな発想です。

 浅田は今回「銀に終わった」以外の何ものでもありません。彼女自身も金メダルを狙っていたはずだし、それが十分可能なポテンシャルを浅田はもちろん持っています。しかし結果はライバルであるキムに大差をつけられての完敗。それも自分のベストパフォーマンスをしての負けではなく、失敗して後で大粒の涙を流してしまうくらい納得のいかない演技をしての負けなのですから、彼女にとって決して「銀メダル」は満足の結果ではあり得ないのです。

 なのに「見事に銀を獲得」とか「よくやった」とか絶賛されても本人は的外れだとしか感じないでしょう。目標が3位以内に入ってメダル獲得というのならそれでも構いませんが、金メダルを狙っていたアスリートに対してむしろそういう無理矢理な称賛は失礼だと思います。余計な気遣いです。

 以前にサッカー日本代表に対しては、とにかく辛辣な批評をする人が多いと書きましたが(こちら)、その真逆な姿勢を女子フィギュアには感じます。そこにはサッカーが弱くてフィギュアが強いからというだけでは説明がつかないものがあります。やはり浅田の「理想の娘(妹)」というキャラクターイメージが批判を許さない雰囲気を作り出しているのでしょうか?髪が黒くてきちんと受け答えをする若者は絶賛、茶髪ピアスだらしない服装で大人に対して突っ張った発言をする若者はバッシング。そう考えるとサッカー選手が批判を浴びやすい理由も納得できます。

 しかし、絶賛一辺倒の声は、ちょっとしたことで大バッシングに容易に変わります。タイガー・ウッズの例をひくまでもありません。愛情と憎悪はコインの裏表です。もし浅田に「純真な良い子」イメージを覆すようなスキャンダルでも持ち上がったりしたら、「裏切られた」と感じた世間の風はどう変わるのか、僕は空恐ろしいものを感じます。

 浅田もキムも安藤もロシェットも鈴木もみなアスリートです。長年、勝った負けたが当たり前の世界で生きています。必要以上に観客がセンシティブになる必要はありません。銀メダルは銀メダル。それ以上でも以下でもないのですから「残念だったね、また次があるよ」で良いと思います。



twitterでもつぶやいています@kanjikurita

twitterまとめブログはこちら