幹事クリタのコーカイ日誌2012

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1月25日 ● 「モテる」という言葉が効かない時代。

 昔々、僕たちがまだハタチくらいだった頃に、日本には空前のテニスブームが訪れました。本当に誰も彼もがラケットを小脇に抱えてテニスウエアで街を闊歩していました。テニスコートは若者で溢れかえり、赤土のコートの上でウッドラケットを握って白いボールを追いかけていたものです。

 僕の新入社員の時に、同期入社のほぼ9割が「趣味:テニス」と書いていました。今となっては22才の90%がテニスを嗜むなんて考えられませんが、実際にいまのアラフィフに聞けばわかります。あの頃の若者は誰もがテニスコートに立ってラケットを振り回した経験があったのです。

 なぜ、みんなテニスをしたのか?それはテニスをすれば「モテる」からです。いや、9割がテニスをする以上、もはやそれは「モテる」からではなく、しないことで「モテない」(と言うか、論外)になることを恐れたからと言った方が正確だったかも知れません。とにかく、男女の恋愛に必須アイテムとしてテニスがあったということです。

 同様にスキーとクルマも「モテる」ためには必要でした。要は夏はテニス、冬はスキー、そしてどちらもクルマで行かないとカッコがつかないということで、みんな「モテる」ために必死でお金を貯めてクルマを買ってテニスラケットやスキーの板を積んでリゾート目指して走っていたわけです。若者の恋愛はリゾートで大量発生していました。『リゾラバ』って歌があったなぁ。

 「若者の○○離れ」が叫ばれて久しいわけですが、テニスもスキーもクルマも若者が離れていったと言われる典型的なものです。それはつまるところ、これらが「モテる」ために必要じゃなくなったことを示しています。テニスやスキーをするのは単なるスポーツ趣味の人になり、クルマも恋愛にとってマストアイテムではなくなりました。いまどき「クルマはガイシャじゃなきゃ。軽なんてありえない」なんて言っている女性はバブル世代だけです。

 そしてもっと言えば、イマドキの男の子は「モテる」こと自体を目指していないケースが増えました。彼らは女性受けするかどうかよりも、自分の価値観を優先しています。結果として同じ嗜好の女性がいれば良いですが、最初から女性受けを考えてはいません。これをすれば「モテる」よ、という煽り文句が効かないのです。昔はこの言葉が絶大な効果を発揮しましたから、そりゃ広告も今よりずっと簡単でした。

 何が言いたいのかと言うと、広告屋としては難しい時代になりましたが、消費者としては今の方が成熟していて進んでいるということです。自分が何が好きで何が必要なのか、それをきちんと見極めて不要なものを買わない。結果それはゴミも増やさない環境にも良いライフスタイルということになります。

 こんな傾向が進む限り、もうバブル時代のようなバカ騒ぎの再現はあり得ないでしょうね。ま、あれはあれで面白かったから経験者としてはもう良いのですが、バブルを知らない世代は「ちょっと悔しい」らしいです。



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