幹事クリタのコーカイ日誌2007

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8月9日 ● 選挙に効くキャッチフレーズ。

 今店頭に並んでいるオヤジ向け雑誌は参院選の分析と後追い記事が花盛りです。中でも僕にとって興味深いトピックが片山虎之助参院幹事長が「姫の虎退治」というキャッチフレーズにやられた、という話です。

 もちろん、片山が負けたのはキャッチフレーズだけの問題ではありません。自民党に吹いたかつてないほどの逆風が一番の原因でしょう。さらに言えば同じ地元に平沼赳夫という反郵政民営化のシンボルがいて、彼の後援会が「なんで今さら自民党に」と動かなかったことも大きく響いたそうです。青木「参院のドン」幹雄とつるんで何やら悪巧みをしていそうな印象も、今回はマイナスになったことでしょう。

 しかし、あれやこれや、片山に対する選挙民の違和感、拒否感を見事にひとつに集約できたのは、やはりあの「姫の虎退治」というキャッチフレーズの力です。あれがなければ、なんだかんだ言っても片山先生は実力者だしな、みたいな空気は残ったと思います。これまでお世話になってるしね、とか。

 ところが「姫の虎退治」と言われると、完全に片山=悪者のイメージが印象づけられてしまって、今さら片山に投票するなんて悪事の片棒を担ぐようなものかと思わされてしまいます。これまで片山を支援してきて、ここにきて民主党候補に投票するなんて心理的な抵抗感があった有権者に、「あ、これは悪者退治だからOKなんだ」と思わせてその壁を取り払ったわけです。しかも民主党の新人、「姫」井由美子の知名度も一気に上げることができました。実に素晴らしいコピーです。

 実は僕も仕事で某政党を担当しているので、そのキャッチコピーを書くことがあります。何十本も作って提案をするのですが、なかなかこちらが良いと思うものを選んではもらえません。これなら少しは有権者の心に響くかもと思って作るのに、向こうはとにかく当たり障りがなくて突っ込まれにくいもの、各方面との軋轢が生じない無難なものを選びたがるのです。

 結果、このコピーでは有権者には届かないだろうなぁ、というものになってしまいます。選挙の勝ち負けという実にはっきりした結果が出るものだけに、少しでも有効なコピーをと考えるのですが、向こうはコピーくらいでは選挙の勝ち負けは変わらないと思っているのでしょう。

 しかし、政治家というのは本来「言葉」で勝負するものです。どれだけ自らの言葉を有権者に届け納得させるかが腕の見せ所なのに、ポスターなどに入れるキャッチコピーを軽んじてどうするんだと思います。自分(もしくは自党)という「商品」を一言で表現してこそ、有権者に検討してもらえるのだと思うのですが、古い頭で選挙をやっている人たちは、電話によるローラー作戦とか握手とか選挙カーからの絶叫とか土下座とか、そういうことで票をかき集めようと考えるみたいです。

 今回の「姫の虎退治」で、キャッチフレーズの効果を彼らが再認識し、選挙用コピーの流れが変わることを僕は期待しています。