幹事クリタのコーカイ日誌2007

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8月24日 ● ボーカリストとしての徳永英明。

 一昨日の夜、NHKの「MUSIC」という音楽番組で徳永英明が出ていました。彼が先日「VOCALIST3」というアルバムを出したからだと思うのですが、ボーカリストとしての徳永英明を初めてじっくり聴くことができました。

 僕はデビュー当時から徳永英明は好きなアーティストの一人ですし、『壊れかけのRadio』はカラオケの十八番です。かなりモノマネ気味に歌うと気持ち良いんですよね。徳永英明のキーは高いのですが、僕には何とか出る高さなので。

 シンガーソングライターではなくボーカリストとしての徳永英明は、病気から回復して「VOCALIST」を発表してから注目されたと思います。彼の高く繊細な声を生かし、女性アーティストのバラード曲を中心にカバーしたアコースティックなこのアルバムは、3枚目までシリーズ化されるほどの人気企画となりヒットしました。

 カバーされた曲はユーミンやみゆき、ドリカムをはじめ、女性に受ける定番曲ばかり。しかも最近のヒット曲もカバーしつつ、中心は80年代の懐かしい楽曲なので、誰にでも馴染みやすい構成になっています。この曲選びの巧みさが、このアルバムのヒットの原因だと僕は思っていました。

 しかし、一昨日改めて徳永英明を聴いてみて、それだけではない彼のボーカリストとしての特徴を感じました。それは矛盾しているようですが、徳永のボーカルには特徴がないということです。例えばサンプラザ中野でも忌野清志郎でも小田和正でも久保田利伸でも良いのですが、彼らならどんな楽曲を歌おうが、自分の曲のように歌ってしまうと思います。それだけ癖が強く、だからこそボーカリストとして魅力的なのですが、徳永英明にはそういう強い個性がありません。

 徳永が歌う「PRIDE」や「わかれうた」を聴いていると、徳永英明というボーカリストの存在はむしろ印象が薄くなっていき、曲そのものが浮かび上がってきます。中島みゆきが歌う「わかれうた」よりも、さらにボーカルの個性が消えてしまい、「わかれうた」という歌それだけが存在しているかのように感じるのです。

 不思議です。徳永の声はハイトーンですが澄んだ声ではなく、かすれたダミ声です。それほどキレイに伸びるわけでもありません。なのに、徳永のボーカルは雑多な強い味を感じさせず、水そのものの味を楽しむような、そんな風に歌い、聴く者に歌が染み込んでくるのです。

 これだけの実績がある歌手でありながら、これほど曲そのものを引き立てて自分を消してしまえる徳永英明は、だからこそ希有なボーカリストなのだとテレビを見ながら感動しました。NHKを見終わった後、早速「VOCALIST」を1〜3までアマゾンで発注してしまいました。大人買いです。大人で良かったです。